2017年3月30日木曜日

明治時代の日本仏教

碧海寿広さんの入門近代仏教思想を読んでいます。知らなかったこともあり、いい勉強になります。

日本の仏教が檀家制度を取り入れているのは周知の事実ですが、その成り立ちを順を追って見ると、江戸幕府のキリスト教弾圧から始まっています。弾圧の過程でキリスト教を止めた人たちの身分を保証を寺院に任せたのが、寺請証文(てらうけしょうもん)であり、日本人全員に義務付けられて行きました。

私は、檀家制度が出来てから葬儀や法事を勤めるようになったのだと理解していましたが、この本によると、このころ時を同じくして、日本全国で葬儀や法事を専門的に勤める寺院が、急速なペースで建立された様子です。そしてこの二つの過程が合流したことで、お寺が身分保証の行政機関となるとともに、葬儀や法事の檀那寺として排他的に担うようになったということです。

この寺請け制度のもとで、人々は必ず特定の寺院の僧侶に、葬儀や法事を依頼しなければならなくなりました。中には身分保証の寄付などを匂わせながら、寺院への高額の布施を強要するなどの悪質な例もあったようです。ある面でこの制度は、幕府の権力を後ろ盾にした民衆に対する収奪のシステムだということも出来ます。

しかし、一方では身近な死者の葬儀や供養を信頼できる寺院・僧侶に行なってもらうことで死者がきちんと成仏してくれることを期待する願いがあったことも事実です。この時代のお寺は、一定の公共性を備えていると主に、教育・娯楽・精神的ケアなどを提供する総合的な文化センターのような役割を果たしていました。この当時はお寺の敷居は低かったものと考えられます。 

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