2017年1月11日水曜日

脳科学と仏教3


釈尊が35歳でさとりをひらき、そこでさとった内容を伝えたのが四諦八正道です。四諦は四つの真理であり、第一番目の苦諦とは生きることは本質的に苦であるという真理であり、二番目の集諦は苦の原因は煩悩であるという真理です。三番目の滅諦とは煩悩を消すことで苦が滅するという真理であり、四番目の道諦は煩悩をなくすための具体的な道が示されています。具体的には八正道という方法です。

この考え方は現代の私たちが知っている医療の考え方によく似ています。健康だった人がある日突然お腹が痛くなり苦しんでいるとします。まさに苦の状態の真っただ中にあります。医師は症状を様々な角度から検討して、その原因を突き止めようとします。その結果原因がわかれば症状の改善のための処方箋を作り、実際に治療を開始します。

 ブッダの修業は瞑想が中心です。瞑想の目的は精神を集中して物事を客観的に見ることです。精神を集中するということは不要な外部の情報を遮断するということです。例えば視覚を遮断すると聴覚が鋭くなるような感じです。五感を遮断することが出来ればどういう世界が広がるのでしょう。

悲しみや不安に押しつぶされそうになった時、人は正しい判断が出来ません。自分を追い詰めてしまい極端な場合は生きる力を無くしてしまう場合もあります。そのようなときに精神を集中して自分の置かれた状態を客観的に見ることが出来れば苦から脱出出来ることになります。

一方脳科学では死の不安や恐怖を乗り越えられるのは統御感であるということが言われ始めました。統御感とは自分の体は自分でコントロールしているという意識です。無力感の反対の状態です。助手席に乗っていると他人の運転に思わずブレーキを踏む動作をしてしまうことがありますが、自分が運転しているとそのようなことはありません。自分が車を制御しているという感覚が安心感を生むのです。精神的安定が手術や薬に勝る例もあるのです。

近い将来脳科学と仏教の接点が見つかる日が来るような気がします。
 

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